不動産の相続登記にはどのような書類が必要なのか、ご質問をお受けすることが多いです。
今回は「遺言による相続登記」について必要となる書類をご説明させていただきます。
なお、「法定相続による相続登記」と、「遺産分割協議による相続登記」につきましては、別記事を作成していますのでそちらをご覧ください。
なお、事案によっては、ここでご説明する一般的な書類以外のものが必要となる場合もございますので、その点はご了承ください。
遺言があることを証明する書類
①公正証書遺言の正本または謄本、または検認済みの自筆証書遺言の原本
公正証書遺言の正本または謄本というのは、公正証書遺言の作成完了時に、公証役場から交付されるものです。
自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所の検認済みのものが必要です。すなわち、検認済証明書が遺言書原本の末尾に綴られ、裁判所が契印したものを用いることとなります。
なお、自筆証書遺言については、検認済みだからといって法的に有効かどうかは別問題です。自筆証書遺言が有効なものであるためには、自書、日付、署名、押印などの要件を満たす必要があり、一つでも要件を欠くと無効となるため、要件を満たさない自筆証書遺言による相続登記はできません。
相続が発生したことを証明する書類
この点につきましては、下記②③の書類が必要となります。
②亡くなられた方の住民票の除票または戸籍の附票
亡くなられた方の住民票の除票または戸籍の附票は、登記簿上の所有者と亡くなられた方が同一人物であることを証明するために必要となります。
③亡くなられた方の死亡の記載がある戸籍謄本
亡くなられた方の死亡時の戸籍謄本は、亡くなられた日や亡くなられた事実を証明するために必要となります。
また、出生までさかのぼる戸籍・除籍等の謄本は必要ありません。この点は、法定相続や遺産分割協議による相続登記とは異なる点です。
不動産を取得する方の住所を証明する書類
④不動産を取得する方の住民票または戸籍附票または印鑑証明書
これらの書類は、存在しない人が登記されるのを防ぐために必要となります。
また、住民票だけが指定されているわけではありません。印鑑証明書であっても、住所氏名が記載されているので、相続登記の住所証明書類として使用することができます。
不動産を取得する方が相続人の場合は、それを証明する書類
⑤不動産を取得する方(相続人)の戸籍謄本
遺言による相続登記であっても、不動産を取得する方が相続人である場合は、その方が相続人であることを証明する戸籍が必要です。
なお、この場合の戸籍謄本は、その取得日が相続発生後のものである必要があります。相続開始時点での相続人であることを証明する必要があるためです。
相続人ではない方が不動産取得者として登記申請する場合は、その方の戸籍謄本は必要ありません。
不動産の固定資産税評価額を証明する書類
⑥固定資産税通知書または固定資産評価証明書(登記申請する年度のもの)
これらの書類は登録免許税の計算のために必要となります。登録免許税は、不動産を取得する方が相続人であるか否かによって、税率が異なります。
不動産を取得する方が相続人である場合の登録免許税は、固定資産税評価額の1000分の4の金額となり、これを登記申請時に法務局へ納税します。
不動産を取得する方が相続人ではない場合の登録免許税は、固定資産税評価額の1000分の20の金額となります。
千葉県内の不動産の登記申請であれば、固定資産評価証明書を法務局に提出する必要はありません。固定資産税通知書に固定資産評価額が記載されていますので、それがあれば登録免許税の計算ができます。
東京都内での登記申請であれば、固定資産評価証明書を取得して、登記申請書とともに法務局に提出する必要があります。固定資産評価証明書は、不動産が23区内であれば「都税事務所」、23区外であれば「市町村役場の資産税課」で取得できます。
その他、必要に応じて提出を要する書類
⑦住居表示実施証明書
亡くなられた方の登記簿上の住所について住居表示の実施がされている場合に必要となります。
⑧不在籍証明書、不在住証明書
相続開始から5年以上経過しているなど、住民票の除票が保存期間経過により取得できず、登記簿上の所有者と亡くなられた方が同一人物であることを証明できない場合に必要となります。
登記簿上の住所に、現時点において所有者の本籍及び住所が存在しないことを市区町村が証明する資料です。
⑨登記済権利証、納税通知書、廃棄済証明書
これは⑧と同様に、登記簿上の所有者と亡くなられた方が同一人物であることを証明できない場合に、それを補完する資料として法務局に提出します。
しかしこれらについては、法務局によって求められる書類に違いがあるので、法務局に確認してから集めた方が確実です。
⑩上申書
⑨の書類がどうしても見当たらず法務局に提出できない場合などは、相続人全員の実印を押印及び印鑑証明書を添付した上申書を作成し、法務局に提出します。またこの場合は、相続関係を証するために遺言者や相続人らの戸籍も必要です。
⑪委任状
登記手続きを司法書士に依頼する場合には、司法書士への委任状が必要になります。
相続登記に関するご相談
相続登記手続きに使用した各書類の原本は、委任状や上申書を除いて手続き完了後にご返却できます。
遺言による相続登記は、法定相続や遺産分割協議による相続登記と比べ、若干ですが必要書類が少なくなります。
とはいえ、それら必要書類を集め、間違いのない登記申請書を作成し、法務局への提出及び回収するなどの作業を行うだけでも大変な労力を使いますので、困ったときには専門家に相談することをお勧めします。
当事務所では、相続登記のお手続き、遺言書作成などのお手伝いをしておりますので、お気軽にご相談ください。
皆様に寄り添い、問題解決のお手伝いをさせていただきます。