自分で書く自筆証書遺言とくらべて、後日の争いになる可能性が低く、相続時の手続きを円滑に進めることができるなど、メリットが大きい公正証書遺言。
公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことをいいます。すなわち、自筆証書遺言のように自筆で書くのではなく、遺言者が公証人に遺言の内容を伝える方法によって作成します。
遺言者は、自分の財産を相続人にどのように引き継いでもらいたいかを決めて、必要書類を揃えて、公証人と打合せを重ねることで手続きが進んでいきます。
遺言者の希望する内容の原案ができたら、最終的に公証人と証人の面前で遺言の内容を確認し、署名押印したら完成となります。
今回は、その作成の流れについてご説明します。
手順1.遺言の内容を考える
遺言書を作成するにあたってもっとも重要なこと、それは遺言の内容を考えることです。
まずは何のために遺言書を作るのか、誰のために作るのか、あらためてご自分の考えを整理しましょう。
できれば家族関係の相関図を書くとともに、財産をリストアップし、所有財産の一覧表をつくりましょう。相関図には、子の配偶者や孫、兄弟姉妹など、法定相続人以外の親族も書き入れてみるとよいのではないでしょうか。
そして、「誰に、何を相続させる」といった具体的な内容を決めて行きます。
この時点で正確な文章にする必要はなく、遺言者の想いがわかればメモでも問題ありません。
手順2.必要書類を収集する
公正証書遺言の作成で必要となる書類は次のとおりです。
①遺言者の戸籍謄本・印鑑証明書
②財産をもらう人の戸籍謄本
③財産をもらう人の住民票
④財産関係のわかる書類
②については、財産をもらう人が遺言者の相続人である場合に必要です。相続人でなければ必要ありません。
③については、財産をもらう人が遺言者の相続人でない場合に必要です。相続人であれば必要ありません。
④については、どのような内容の遺言書を作成するかによって、必要書類は変わってきます。例えば、不動産がある場合はその登記事項証明書が必要になったり、預貯金がある場合は通帳のコピーが必要になったりと、公証人によっても様々です。
手順3.証人を2人選ぶ
公正証書遺言の作成の場においては、証人が2人立会う必要があります。
なお、下記の者は、利害関係を有する者として証人になれないとされています。
- 未成年者
- 推定相続人や受遺者(遺言によって財産を受け取る人)、その配偶者、直系血族
- 公証人の配偶者、4親等以内の親族
- 公証役場の書記官や職員
これらはいってみれば、未成年者、遺言者と近しい関係にある人、公証人と近しい関係にある人などです。
もし身近に証人となる人がいなければ、公証役場に依頼すると手配をしてもらえます。
また、司法書士などに遺言書の作成を依頼すれば、証人も手配してくれることが多いでしょう。
手順4.公証人と事前の打合わせを進める
公証人に遺言の内容を伝え、遺言書の案文を作成してもらうための打合せを行います。
ちなみに公正証書遺言の作成は、必ずしも住所地の公証役場で作成する必要はありません。
場合によっては何度か打合せを重ねることもありますので、ご自宅や職場などから近い場所、行きやすい場所にある公証役場を選びましょう。
公証役場では、持参した必要書類を提出し、遺言をする目的と内容を伝えたうえで、どのような遺言を作成するのかを公証人と相談します。
公証人によっては、追記した方がよい内容や、こうした方がいいですよという提案をしてくれる人もいます。
このように事前打ち合わせした内容をもとに、公証人が遺言書の案文を作成します。
手順5.公正証書遺言を作成する
作成当日は、本人と証人2名が、事前に取り決めした時間に公証役場に赴きます。
当日は、以下の流れで公正証書遺言を作成していくのが一般的です。
①公証人が事前に作成した遺言書の案文を、遺言者と証人の目の前で読み聞かせる。
②公証人から読み聞かされた遺言書の案文に問題がない場合、遺言者と証人はそれぞれ署名と押印を行う。
③遺言が方式にしたがって作成されたものである旨を付記したうえで、公証人が署名と押印する。
④公正証書遺言は原本・正本・謄本の3種類が作成され、そのうち正本と謄本が遺言者へ交付される。原本は公証役場で保管。
⑤遺言者は公正証書遺言の作成費用として、規定の手数料を公証人に支払う。
遺言に関するご相談
公正証書遺言を作成するには、書類集めや公証人との打合せが必要で、時間も費用もかかります。
ですが、相続が発生した際にスムーズに手続きを進められるのは、その多くは公正証書遺言が作られていた場合です。
残されたご家族の負担を減らし、ご自身の想いをしっかりと伝えるためにも、可能な限り公正証書遺言を作成することをお勧めします。
当事務所では、公正証書遺言作成のお手伝いをしております。お気軽にご相談ください。
皆様に寄り添い、問題解決のお手伝いをさせていただきます。