複数の相続人がいる場合に、不動産の相続登記を共有名義で行おうと考えられる方がいらっしゃいます。
これはなにも法定相続分による登記に限らず、自由に配分を決めることができる遺産分割協議の場合であっても同様です。
他に相続人間で分配する財産がない場合であったり、相続人間でもめごとにならないようにするためというのがよくある理由ですが、できれば不動産は共有名義で相続するべきではありません。
今回は、不動産を相続するときに、共有名義にしないほうがいい理由についてご説明します。
共有で相続登記すべきでない理由1:共有者全員の同意が必要な場合がある
不動産を共有名義にしていると、不動産の売却や建替え、取壊しなどをしたい場合に、共有者全員の承諾を取り付けねばなりません。
不動産を所有していると、売却して現金化したい時もあるでしょうし、建て替えを必要とすべき時もあるでしょう。
不動産を売却したいと一部の共有者が考えたとしても、共有者全員の足並みがそろわなければ、手続きを進めることができないため、売りたいときに売れなかったり、売却のタイミングを逃してしまうことになります。
全員の足並みが揃わない理由としては、共有者の一部が売却に反対するという場合もありますが、それだけではありません。
例えば共有者の一部が、相続登記を行った当時は元気だったけれども、売却しようとする際には認知症を発症していた場合などが考えられます。この場合は、まずはその方に成年後見人等を選任せねば、売却手続きが不可能となります。
また、共有者のうちの一人が未成年者であり、かつ親権者がいない場合は、特別代理人の選任が必要です。共有者が万が一行方不明になってしまった場合などは、不在者財産管理人の選任が必要になる可能性もあります。
不動産を共有にするということは、その共有者間での合意を取り付けるという手間だけではなく、共有者の人数分のリスクが潜在するという点も考慮すべきなのです。
共有で相続登記すべきでない理由2:共有者が増えいくリスクがある
不動産を複数の相続人で共有している状態が続くと、年月の経過とともにその共有者の中で新たな相続が生じ、次の世代の相続人が不動産の名義人に加わります。
例えば、当初共有者が兄弟3人だったとしても、そのうち1人が死亡して相続が発生した場合に妻と子2人が相続すれば、共有者は一気に5人に増えてしまいます。
そういった相続を繰り返していくと、次々と名義人の数も増えていくことになります。
不動産の共有者が増えれば、それだけ話し合いを大人数で行わなければならなくなり、手続きも煩雑になります。
場合によっては、全員の意見がまとまらなくなり、売却等をすることが不可能な不動産となってしまします。
共有名義での相続登記を避けるための方法
不動産が共有名義での相続登記とならぬようにするための一番の方法は、不動産の所有者に遺言を作成しておいてもらうことです。
遺言により不動産を相続する人が指定されていれば、相続人は原則としてその内容に従う必要があるため、多数の共有者で不動産を相続するという将来的なトラブルを回避するのに大いに役立ちます。
遺言がない場合は、遺産分割の方法を検討することにより、不動産以外に相続人間で分配する財産がない場合であっても、共有者を増やすことなく相続登記をすることが可能です。
具体的には、相続財産の内容や相続人の希望を元に、次の3つの手段の中から最適な方法を選びます。
①不動産以外に現金などの財産がある場合には、不動産を共有とすることなく分配する「現物分割」。
②財産が不動産だけの場合には、それを相続した人が相続していない人にお金を支払う「代償分割」。
③不動産を売却してそのお金を分割する「換価分割」です。
相続財産の内容や相続人の希望を元に、3種類の遺産分割方法の中から最適な方法を選びましょう。
相続登記に関するご相談
不動産を共有名義で相続すると、相続手続きがスムーズに終わるように思えますが、それは問題を先延ばしにしているだけとも言えます。
「分けにくいからとりあえず共有で」という考えで手続きを進めることは避けるべきかと考えます。
将来的なトラブルの原因を作らないためにも、後の世代のためにも、不動産を相続する方には、できれば共有とならない方法で手続きを進めていただければと存じます。
当事務所では、相続登記のお手続き、遺産分割協議書の作成、遺言の作成などのお手伝いをしておりますので、お気軽にご相談ください。
皆様に寄り添い、問題解決のお手伝いをさせていただきます。