司法書士や弁護士が債務整理を受任しますと、速やかに債権者宛に受任通知を発送します。
すると、その通知を受け取った債権者から債務者本人に対する督促が止まります。
この受任通知には、いったい何が記載されており、送るとどのような効力があるのでしょうか?
受任通知の内容や督促が止まる理由、受任通知を送っても督促が続くケースについて説明します。
受任通知とは
受任通知とは、司法書士や弁護士が債権者に対し、依頼者から債務整理の依頼を受けたことを知らせる書面です。
司法書士や弁護士が債務整理の依頼を受けると、速やかに各債権者へ受任通知を送ります。
この受任通知には「本件は司法書士が受任したので、今後は依頼者本人には連絡をせず、司法書士まで連絡をしてください」などと記入されています。
通常であれば、司法書士や弁護士に債務整理を依頼すると、長くて1週間程度のタイムラグはありますが、債権者から依頼者本人に対する督促は止まります。
受任通知の効果が発揮されるのは、債権者が受任通知を受け取ってからですので、この数日の間は行き違いで督促が行われる可能性もあります。
その場合でも、すでに司法書士や弁護士に債務整理を依頼しているのであれば、督促に応じる必要はありません。
もし電話などで催促されても「司法書士の〇〇に債務整理を依頼しました」と伝えれば、それで終わりです。
受任通知を送るとなぜ督促が止まるのか
受任通知が貸金業者に届いたあとの取立てや請求行為は、貸金業法で禁止されています。
それを順守しない貸金業者は、行政処分や営業停止の対象になる可能性があります。
貸金業登録をしている貸金業者では、法律を破ってまで取り立て行為をしてくるという業者はほとんどありません。
したがって受任通知を送付すると、ほとんどの業者が依頼者に対する直接の取立てを停止することになります。
受任通知を送ると債権者への支払いも止められる
受任通知を送ることによる効果は、債権者から依頼者への督促が止まるだけではありません。
今まで債権者へ続けてきた毎月の支払いもいったん止めることができます。司法書士や弁護士に依頼すると、借金の返済を止められるのはこのためです。
返済をストップしている間に、まずは生活の再建を図り、それから司法書士や弁護士への費用や、裁判所実費等の積立をしていただくこととなります。
そして支払いが再開するのは、任意整理ならば債権者と分割弁済の和解ができた後、個人再生の場合は再生計画が認可された後となります。
自己破産の場合は、免責を受けられたなら支払いは免除されるので、司法書士や弁護士に依頼した時点から、一切の支払いをしなくてもよいこととなります。
受任通知を送っても督促が続くケース
受任通知の効力があるのは、あくまで貸金業者や債権回収会社からの督促に対してであり、以下のようなケースだと止められません。
- 滞納税金や警察からの罰金
- 離婚した元配偶者からの養育費請求
- 個人間でのお金の貸し借り
- 貸金業者からの返還請求訴訟
そもそも、滞納した税金は借金とはみなされず、債務整理の対象にすることはできません。返済方法については、依頼者が直接交渉いただくことになります。
養育費請求や個人からの借入、貸金業者ではない取引先などに対する債務の場合だと、これらの債権者には貸金業法が適用されません。
司法書士や弁護士が受任通知を送っても、無視して督促してくる可能性があります。
訴訟手続きは、受任通知を送っても訴訟そのものを取下げさせられるものではありませんし、そもそも債権者が訴訟を起こす権利を奪うことまではできません。そのため訴訟を起こされたら放置せず、必ず個別に対応する必要があります。
ただし訴訟を起こされた結果、勝訴判決を取られたとしても、任意整理の話し合いができれば強制執行による取り立てを防止できますし、自己破産や個人再生の認可がおりたら、強制執行は不可能になります。
訴訟を起こされたケースでも、債務整理は有効な解決方法といえるでしょう。